Oasis
2003年3月30日

 ここはカリフォルニアの人里離れた砂漠の中のオアシス。車なら幾つもの険しい山を越え、道なき道を掻き分けて漸く辿りつく事ができる場所であり、地図にも載っておらずおいそれと簡単に行く事の出来ない場所である。オアシスの近くには軽飛行機の着陸できるエアストリップも有るが、チャートには載っておらず、そこいらのガイドブックにも紹介されていない知る人ぞ知る秘密の場所だ。

オアシスに湧いているのは水ではなく、程よい熱さの透明な温泉である。ここでは誰も水着など着ずに純粋に温泉に浴する事を楽しんでいる。人々はみなタオルも巻かずに幾つかある湯船を行き来している。生まれたままの姿の人々が白い砂漠の上を歩く様を見ていると、ここは天国ではなかろうかと思えてしまう。日の出と共にテントから抜け出し、透き通った熱い湯が鏡の様に景色を映し出す湯船を独り占めにして遠く雪を頂く山脈を眺めていると、現実の世界などどうでもよく思え、いっそこのままここに住み着いてしまおうかと思ってしまう。


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