カナダの中ほどにあるマニトバ州のウィニペグを訪問する機会がありました。到着した日は平日であったにもかかわらず、
町は人気が無く閉まっている商店も多くなんとも寂しい町だと思いました。有名な観光地があるわけでもなく退屈な町だと
事前情報を得ていたせいもあり、私が持ったウィニペグの第一印象はあまり良くなかった。しかし、その印象は一変した。
時間があったので町外れのエアフィールドに行ってみると、そこは私にとって夢のような場所だった。
ウィニペグのダウンタウンから東へ車で約15分ほどのところに、地平線まで続く広大な緑の原っぱにゴルフ場のように綺麗に
刈り込まれた飛行場があった。その脇にはハンガーが並びタイダウンエリアには幾つもの軽飛行機が並んでいる。飛行場の名前は
LYNCREST AIRPORT、そこはSPRING FIELD FLYING CLUBというクラブが管理しており、利用するにはメンバーシップが必要。
クラブハウスの前に車を止めると、無線アンテナの鉄塔の脇にメンバーと思しきおじさんたちが5〜6人集まって写真を撮っていた。
取り終わって暫くしてから声をかけると一人の白人の男性が相手をしてくれてクラブの説明をしてくれた。彼はクラブハウスを
案内してくれた後、彼のハンガーの中も見せてくれた。そこには黄色いパイパーカブと作りかけでまだエンジンの無いカブの胴体が
置いてあった。黄色いカブも彼自作とのこと。彼は説明しながら「This is my summer college」と笑っていた。メンバーシップは
年間たったの$450。それでハンガーを持つ権利が貰える。後はハンガーの実費だけ。既存のを買うも良し、日曜大工で建てるのもよし。
ハンガーの一つには自作機の作り方を教えてくれるところもある。ここのメンバーの殆どは自作機のオーナーらしい。
ハンガーと機体のオーナーというとお金持ちというイメージがあるが、ここのメンバーはみなごく一般的な庶民ばかりとの事。
LYNCRESTは以前はウィニペグ市の所有だったのがSpring FIeld Flying Clubに払い下げられたとの事。綺麗に刈り込まれた草
はメンバーがみなで維持しいてるらしい。彼のハンガーにも草刈用のトラクターとハンガーの前を刈る人力の草刈機があった。
それで毎週草刈をしているらしい。その日もメンバーの一人が滑走路脇の草をトラクターで刈っていた。クラブハウスもメンバー
が共同で建て、今日、無線アンテナの鉄塔が完成したので集まって写真を撮っていたらしい。私はアメリカでの活動範囲の多くが
南西部だったので、砂漠のような赤い砂地にアスファルトを引いたエアストリップを見て、あの乾いた感じが好きでいつか滑走路脇
の家に住みたいと思っていた。しかし、カナダの柔らかい草に覆われた滑走路も見ているだけでなんとも癒される。
週末が明けて月曜になるとダウンタウンも通勤時間は道路が大渋滞するほど活気が出てきた。到着した日はカナダデーという
祭日だったので閑散としていたらしい。それでも人口たった36万人の田舎だが、郊外にはアメリカと全く同じような
大型のショッピングモールもある。そしてその近くには広大な緑の原っぱの飛行場がある。クラブのメンバーは好きなときに
ハンガーで自作機を作ったり、それを飛ばしたり、フィールドの草を刈ったり、メンバーで共同作業をしたり、私にとっては
夢のようなところである。ウィニペグは寂しい退屈な町という第一印象は消し飛んでしまった。将来リタイヤしてこんな町に
住めたら幸せだな。
タイダウンエリアでもハンガーでもメンバーシップの料金は同じ
案内してくれたJohnのハンガーの中。リタイアした彼は毎日ここで遊んでいるらしい。
クラブハウス
滑走路の境界には赤いパイロンがまばらに立っているだけ。原っぱで目の前を飛行機が飛んでいく。
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