ここはカリフォルニアの山奥にある砂漠のオアシスに隣接するダートエアストリップ。カリフォルニアにはこんなダート
ストリップが山ほどあり、チャートに丸印で記されている物も有れば、どこにも何の情報も記されていないストリップもある。
このダートストリップもチャートには記されていない。しかし、近隣に温泉が湧いており、一部のアメリカの温泉マニアの間では
実は有名な場所であった。
写真左下の方に石を盛って作られた、写真では分かりにくいが白く塗られた二つの山はランウェイエンドのサインである。
駐機しているセスナの上辺りが反対側のランウェイエンドだ。ランウェイの長さは約1,400ft前後。反対側から手前に向かって
アップスロープとなっているので、着陸は手前に向かって行わざるを得ない。アップスロープとランウェイの幅が狭い為に
イリュージョンで進入角が急峻に感じるが、それを克服して手前にエイミングポイントを取り更に急峻な角度で進入する。
ランウェイエンド上で機首をぐいっと持ち上げストールしながらタッチダウンし、同時にフラップを上げ飛行機がスリップしない
程度にブレーキを掛ける。がたがたの砂利混じりのダートをやや蛇行しながら走るセスナをコントロールしていると、反対側の
ランウェイエンドが目の前に迫ってきたところで漸くスピードが落ちる。ここは標高が1300ft前後でこの日は気温が35℃だった
ので、POHに書かれているグランドロールはランウェイの長さよりやや短い程度。風がほぼ真横から吹いていたので救われた
という感じだった。
着陸して一度エンジンを止め一息ついてから適当な場所に機体を動かそうとしたら、なんとスターターが動かなくなってしまった。
どうやらダートを走った振動でどこかの接触が悪くなってしまったようだった。携帯電話など通じるはずも無く、よしんば助けを
呼べたとしてもここに来るまでにどれだけ時間がかかるか分からない。途方に暮れている私の頭に一つのアイデアが浮かんだ。
マスタースイッチオフ、マグニートスボース、パーキングブレーキセット、そして私は外へ出た・・・。
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