水の都
平成20年2月4日午後

 それまで民家の間を縫うように細い運河を静かに走っていたゴンドラが大運河に出ると、急に雰囲気が変わり賑やかな町が現れた。 土産屋が立ち並ぶ大きな橋をくぐると両岸にはレストランや船着場があり、運河には色んな船が行き交い岸は沢山の人で溢れていた。 ヴェニスの島の真ん中辺りに位置するRialtoの町だった。

 朝、フィレンツェに居た私たちはイタリアの高速道路アウトストラダを時速180キロ前後で飛ばし午後2時過ぎ頃ヴェニスに到着。 ヴェニスの町には車両は入れない。陸からヴェニスに繋がる橋を渡ると橋の袂にあるパーキングに車を止め、そこから先は歩きか 水路を行く船しか交通機関が無い。私たちサンマルコ広場まで水上バスで行くつもりだったが、間違えて途中で船を降りてしまい そこから広場まで歩く事にした。壁に貼ってある矢印に従って足早に水路の町の小道を歩きなんとか明るいうちにサンマルコ広場に 到着。鐘楼の上から町を眺め教会の中を見るともうクタクタだった。私は途中の水路で油を売っていたゴンドラの船頭と交渉をして Rialtoまで乗せてもらう事にした。家族4人で80ユーロ(約1万3千円)とちょっと高かったが、いずれにしろ乗るつもりだったので 手を打った。

 この日は丁度祭りかイベントがあったらしく何処もかしこも沢山の人でごった返していた。サンマルコ広場には鉄パイプで特設 ステージも作られていた。Rialtoの運河沿いのレストランで夕食を済ませるともうすっかり夜になっていた。その晩は次の目的地 ウィーンに少しでも近い所まで行こうと思い宿の予約をしていなかった。辺りが暗くなるにつれて私は段々不安になっていった。

 ウィーンでの時間を少しでも多く確保するため今日中にアルプスを越えておくつもりだったが、疲れと眠気がとても強く、きっと 峠は雪が降っていると思い、手前の町Udineで高速のインターを降り最初に見つけたホテルに宿を取った。翌朝4時に出発したのだが、 案の定山を登り始めると雪が降り出した。一部除雪が不十分な区間があり、ブレーキを踏んでもスリップして止まらず危うく追突 という場面もあった。もし無理をして夜山越えをしていたら間違いなく事故を起こしていたに違いない。


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