後悔先に立たず
平成20年11月19日

 自分には人と違う事をする事で満足するという性質がある。それは分かっていた。トドラ渓谷は普通みな入り口周辺の絶景を見て 次の観光地へ行くようだ。河原のダートを越えるとその向こうに何があるのだろうと思い、冒険心を起こしてちょっと奥へ行ってみた。 ダートロードはほんの短い区間で直ぐに舗装道路が続いていた。グランドキャニオンの中を走っているようで景色も良かった。 暫くすると前から車が2台走ってきた。2台めの人から少し視線を感じた。すれ違うときに止まったのでこちらも止まるとなんと 乗っていたのは砂丘のラクダツアーで一緒だったスペイン人のカップルだった。彼らはその奥にあるカフェまで行ってコーヒーを 飲んでこれから町に戻るところとの事。今思えばこの時馬鹿な対抗心に火がついたのだと思う。そのカフェを越えダートロードに突入、 水没した道路を越え山中の町に着いたときはもう引き返せない時間になっていた。おいてけ掘りの話を思い出しながら私はこの道を 進んでしまった事を後悔した。草木も生えない標高3,000メートル級の山の中で、途中4駆のトラックでも苦労するような岩場や ぬかるみや雪の塊を越えたりしながら、日が傾きだした時はこの山中で夜を明かすことを考えとてつもない恐怖が襲ってきた。 間違っても車に致命的なダメージを与えないよう目の前の道の石や窪みなど路面状況を把握しつつ恐怖心に耐えながら運転していて 以前にも似たような恐怖を覚えた事があるなと思った。それはIFRで初めて一人で雲の中に入っていく時だった。あの時ももしか したら死ぬんじゃないかという恐怖心に襲われた。しかしこの山道はIFRのように抜けられる保障は無い。地図を見ても自分が今どこ にいるのかも分からない。もしGPSが無かったら気が狂っていたかもしれない。恐怖で身体が少し震えているのが分かった。 この時ばかりはこんな道へ進んでしまった自分が本当に恨めしく思え、悔やんでも悔やみきれなかった。

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