2001年4th of July
マウントラッシュモア遊覧飛行の旅
7月1日(2日目)


Leg 2
第2レッグ
<ラスベガス → ペイジ[スケジュールへ戻る]

初めてのクリアランス

LAS Txwy H
フライトガイドでタクシーウェイの場所を確認しているところ。
マッカラン国際空港(LAS)出発
<ネバダ州>


 クラスB空港からの離陸は初めてだったので、出発前日にビデオを見たり本を読んだりして管制塔 との交信にはどういう手順があるのか確認しておいたのですが、やはり慣れていないので中々すんなりとは行きませんでした。 仕方なくコックピットにて本を読みながら先ずはクリアランスを取得、そしてグランドから タクシーの許可が出たのですが、あまりに広すぎて何処がタクシーウェイなのか分からず途方に暮れていると、 「前にいる飛行機に付いて行け」とグランドから指示が。ところがその飛行機も迷っていたらしく、 暫く身動きが取れませんでした。すると後ろにいた一機が私を追い抜いて行ったのですが、 指定されたのとは違うタクシーウェイに入ってしまい、管制塔から怒られていました。

 巨大な国際空港で離発着することは、パイロットになることを夢見ていた者にとってはとても エキサイティングな経験ですが、やはり単発の軽飛行機には向かないようです。 しかし、ラスベガスという土地柄も有るとはいえ、このような大空港が軽飛行機にも開放されているところは、 さすがジェネアビ大国アメリカならではです。
LAS txwy H

あまりの広さに最初ここがタクシーウェイだとは信じられなかった。
LAS Tower&VOR

Runway19を離陸中の飛行機から見た管制塔。手前にはVORが見える
Left Xwind Rwy19

離陸直後に振りかえって見たLAS Runway19
ローカルエアポート

 LASから東北の方角へ飛び立ち、レーダーサービスが終了するあたりでネリス空軍基地が眼下に見え、 暫く飛ぶともうすぐにユタ州です。LASからPGAへの直線コースではVORの電波が届かなそうですが、 天気さえ良ければVOR無しでもVFRフライトフォロイングとパイロテージだけで十分行けそうです。 しかし今回は途中SGUやその他の空港を空撮する為に、敢えてVORを経由して飛びました。 ここに写真を載せた他にも幾つか空港があり、万が一の事を考えるといつでも着陸できる場所があって とても心強いです。途中、空から見たザイオン国立公園の眺めも中々でした。
LSV

ネリス空軍基地
SGU

メサの上に有るセントジョージ空港。まるで空母のよう。
1L8

ザイオン国立公園の入り口に位置するHurricane
GrassyMeadow

Hurricaneの直ぐ隣のGrassyMeadow。コミュニティー専用のプライベート空港です。
Zion

空から見たザイオン国立公園
KNB

ラスベガスとペイジのほぼ中間にあるKanab Mun.空港
上空から見たPGA
目印は赤い砂漠の中のオアシスようなペイジの緑
ペイジ・ミュニ(PGA)到着
<アリゾナ州>


 ペイジの町はグレンキャニオンダムの脇にあるので見つけやすいのですが、空港が何処にあるのか最初なかなか分かりませんでした。 かなり近くまで行かないと初めての人には分かりにくい空港です。ペイジの町はレイクパウエルのレジャー基地で、 さらにグランドキャニオンやグレンキャニオン、モニュメントバレーなど、他の人気のある観光名所や 国立公園への中継基地にもなっており、小さな空港の割にはプライベートジェットや小型旅客機などが頻繁に発着していました。


Leg 3
第3レッグ
<ペイジ → ミーカー>[スケジュールへ戻る]

グレンキャニオンとレイクパウエル

PGA Lobby
ターミナルのロビーからは、滑走路の向こうに広がる西部の荒野が堪能出来る。
ペイジ・ミュニ(PGA)出発
<アリゾナ州>


 ペイジに来るのは実は今回が2回目で、以前ラスベガスからモニュメントバレーへ行くツアーに参加した時に 飛行機が給油の為にここへ立ち寄り、暫く土産物屋で時間を潰した事がありました。この日もチャーター便 らしき小型旅客機が発着しており、沢山の観光客でターミナルは賑わっていました。 結構立派なターミナルだったので食事をする所も有るのではと思い中継地点に選んだのですが、 いざターミナルに行ってみると土産物屋とレンタカーのカウンターしかなく、 結局FBOのお兄ちゃんにバンで近所のマクドナルドまで連れて行ってもらい ハンバーガーを買って来てFBOのパイロットラウンジで食べました。


ロビーターミナルビルにある土産物屋


向こう側の車がFBOのバン。これでマクドナルドまで連れて行ってくれました。


FBOのパイロットラウンジ。機内で食べるのをやめて買ってきたハンバーガーをここで食べました。
グレンキャニオン・ナショナルレクリエーションエリア

 レイクパウエルはグランドキャニオンより上流のコロラド川をダムで堰き止めて作った人造湖です。 複雑に入組み荒涼とした赤い岩の大渓谷に青い水を満々と湛える湖。その景観は見る者を圧倒します。 どこまでも続く絶景に改めてアメリカ大陸の大きさを思い知らされます。 湖上には数え切れないほど沢山のボートが白い波を曳きながら思い思いに走り回っていました。


何処までも蛇行する川


ものすごく蛇行する川


水面に戯れる船たち


こんなところにダートのエアストリップが!ここに着陸して一体何をするのだろう?(Needles Outpost)


赤い大地に取り残されオアシスの様なMoabの集落。勿論ここにもエアポートが有る。


ミーカーはこの山を越えた向こう側。一見なだらかな丘のようだが、これでも8000ft級。
上空から見たEEOの滑走路
ミーカー(PGA)到着
<コロラド州>


 グランドジャンクションから8千フィート級の山地を越えると、緑の谷間にミーカーの集落がありました。 空港の標高も6千フィート以上あり、滑走路の長さが妙に目立つ田舎の空港です。


Leg 4
第4レッグ
<ミーカー → キャスパー>[スケジュールへ戻る]

峠の茶屋

FBO兼おばちゃんの家
ミーカー(EEO)出発
<コロラド州>


 ペイジの次ぎの中継点として他にも候補は幾つかあったのですが、VORが有るのでミーカー(Meeker)に決めました。 知らない土地でしかも人里離れた山間部で万が一迷った時の事を考えると、やはりVORが有るということは 非常に心強いです。

 ミーカーはロッキー山脈を挟んでデンバーの反対側(西側)に位置する山の中の小さな集落です。 どうしてこんな所に人が住んでいるのか?と思うような辺境の地にポツンと給油ができる空港があるのですが、 同じようなルートでロッキー山脈を越える者にとっては丁度よい場所にありとても有りがたい空港です。 そのせいか、こんな辺鄙なところでも一日に10機くらいは給油しに来るそうです。

 空港といってもFBOには60歳ぐらいのおばちゃんが一人いるだけで、彼女が給油からUNICOMから一人で何役もこなしていました。 そして彼女は給油を済ますと私達が休憩しているラウンジ(リビング?)の隣のオフィスで編物を始めました。 建物も民家そのものでなんだか山越えをする途中で峠の茶屋に寄ったような気分にさせてくれる、田舎情緒溢れるのどかな空港でした。


まるで道路に着陸してしまったような気持ちになるEEOの滑走路。FBOは坂を下った所に有りここからは見えない。


給油ポンプの前に駐機したArcher


パイロットラウンジ兼リビングでおばちゃんの愛犬と戯れる家族

冷や汗

 ミーカーでは大変貴重な勉強をしました。ミーカー(EEO)は一本の滑走路の端にFBOが直接つながっている、 いわゆるエアストリップ形式の空港なのですが、その滑走路は長さが6500フィートも有り、 滑走路ばかり妙に立派な空港でした。着陸する時、いつもの様に風向きを確認して風上の南に向かって降りました。 しかし出発する時は6500フィートも有る滑走路を反対側までタクシーバックするのが億劫だったので、 ズボラしてFBOの横から滑走路の南端に入ると直ぐに風下の北向きに離陸を開始したのです。

 スタート直後、普段に比べいまいち加速が悪いと感じたのですが、滑走路が長いので多少風向きが悪くても 平気だろうとたかをくくっていました。走り出して暫くすると滑走路が少し上り坂になっている事に気が ついたのですが、その時は既に止まれない状況になっていました。そのままフルスロットルで走りつづけ ましたが一向に離陸速度に達しません。何故ならEEOは標高約6400フィートの高地にあり空気が薄く揚力が 得にくい為、離陸するのに平地より長い助走距離が必要だったのです。しかも逆風で上り坂、 「これはひょっとして駄目かな?」と一瞬思ったのですが、滑走路を目一杯使って何とか飛行機は空中に 浮かび上がりました。しかしちょっと操縦桿を手前に引くだけでストールウォーニングホンが鳴り、 中々高度を上げる事が出来ません。そうこうしているうちに目の前に山が迫ってきて旋回せざるを得なく なってしまいました。エアスピードは失速ギリギリでとても旋回出来るような状態ではありませんでしたが、 だましだまし機を方向転換させ、何とか危機を脱出する事ができました。

 運良く危機を回避できたから良かったもの、もし墜落あるいは不時着していたらと思うと今でもぞっとします。 飛行機にはたった一つのことを確認し忘れたばかりに命を危険に晒してしまう怖さがあることを改めて思い知らされました。


Strait In Rwy3 CPR
キャスパー(CPR)到着
<ワイオミング州>


 ミーカーを過ぎると標高7千フィートくらいの丘陵や平原が続きます。町も無く景色にも変化が無い つまらない平坦な原野を抜けると、なだらかなキャスパー山の側にナトロナ国際空港はありました。 キャスパー周辺の天気は概ね良好で雲も無かったのですが、風がとても強く最大で25ノットくらいの 突風が吹いており、広い滑走路にストレートインという簡単なコースだったのですが、 風にあおられハードランディングとなってしまいました。辺りは見渡す限り草原というのどかな場所 の割には大きな空港で、滑走路も4本ありFBOの設備もしっかりしていました。


Leg 5
第5レッグ
<キャスパー → ラピッドシティー>[スケジュールへ戻る]

Go/No-Go

雲海に沈み行く夕陽
キャスパー/ナトロナ・カウンティー国際空港 (CPR) 出発
<ワイオミング州>


 ここまで来れば最終目的地のラピッドシティー(RAP)まであと一息。しかし日もだいぶ西に傾いてきて、 あたりはたそがれ時の雰囲気になってきました。天気がすこし気になったので、到着するなりすぐにFBOの ロビーに設置してあった端末で気象レーダーの画像を見てみると、なんとRAPまでのルート上空は殆ど雲に 覆われているではありませんか。METARによるとRAPでは雨が降っていて、雲、視界ともにマージナルVFRでした。 端末の情報だけではとても危なっかしくて出発する気にはなれず、FSSに電話して詳細な気象情報を聞きつつ 飛行可能かどうか相談してみました。しばらく話し合った結果、予報ではRAP周辺の天気は夜にかけて好転 しそうだし、最悪RAPが駄目でも少し東の方へ行けば天気は良いので何処かに降りれるだろうと言う事で、 そのままフライトプランをファイルしてもらい計画通り出発する事にしました。


上空から見たCPR。


Casper Jet Serviceのエントランスホール。ここで一休み。


航空気象情報が見れる端末。これを見た後に横に有る電話でFSSのブリーファーと相談し、フライトプランをファイルしました。
雲のじゅうたん

 キャスパーを出てしばらくすると予想通り雲が出てきました。雲の層は低くて薄く、隙間も多いので さほど問題は無かったのですが、夕陽は今にも沈みそうだし、知らない土地でしかも辺りには空港も無く、 とても心細くて仕方ありませんでした。雲海は夕陽を受けて金色の波となり、地上では見る事の出来ない 素晴らしい景色に包まれてのフライトだったのですが、操縦している本人は果たしてこの雲は晴れるの だろうかと、心配でとても景色を楽しんでいる余裕は有りませんでした。


行く手を阻む地平線まで続く雲海


夕陽を受けて金色に輝く雲の波


まるで海岸線のような雲海の際
RAP夕闇の滑走路
ラピッドシティー(RAP)到着
<サウスダコタ州>


 雲に覆われたマウントラッシュモア周辺の山を越え、ラピッドシティーの街の灯が見えてきた時は本当に 嬉しく、そしてほっとしました。ビーコンを見つけ空港へ向かったのですが、日が暮れており遠くから では滑走路の向きが掴みにくく、トラフィックパターンを認識するのに少々てこずりました。

 着陸すると近くのタクシーウェイが工事中だった為、タワーに言われるまま180度ターンをして滑走路を 少し逆走してから別のタクシーウェイに出ました。初めての空港で勝手が分からず、真っ暗なタクシーウェイ で途方に暮れていると、遠くで誰かが赤い誘導灯を振っているのが見えました。こっちへ来いと合図をして いるようだったので、誘われるがままに行ってみるとFBOに辿り着きました。

 飛行機を止めて荷物を下ろしていると燃料を入れていたお兄さんに「ホテルの予約は有るか?」と尋ねられ、 「ダウンタウンのホリデイインだ。」と答えると、「うちの会社の名前でディスカウントしてもらえるはずだ、 今から掛け合ってやるから少し待っていろ。」と言われました。パイロットラウンジで一休みしていると、 カウンターに居たおやじさんが一頻り話した後で電話を切ると、「一泊$70にしてやった、 今シャトルが来るから待って居ろ。」と私達に告げました。私が一泊$140で予約した同じホテルを なんと半額にしてくれたのです。冷蔵庫の中の飲み物やサンドウィッチは無料、タイダウンフィー (飛行機の駐機料)も無料、そして私達が翌日レンタカーを借りることを聞くとおやじさんは帰りがけに 自分の地図帖を私にくれたのです。ここへ来て初めてアメリカの田舎の人の優しさに触れた気がしました。


翼よ、あれがラピッドシティーの街の灯だ...


給油を終えエプロンに繋がれるのを待つ愛機。長旅ご苦労様、明日は一日お休みです。


FBO Jetstream Aviation のカウンター。スタッフは皆とても親切でした。


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