<サウスダコタ州> 朝ホテルを出ると空はどんよりとして分厚いねずみ色の雲が張り詰めていました。「これは駄目かな?」 と思いながらも、取り敢えず空港へ向かいレンタカーを返却してFBOで待機。東の地平線の上は晴れている のですが、上空と肝心の西方面は絶望的な雲。サンダーストーム、ライトニングも報告されていました。 そして暫くすると小雨まで降り出す始末。例によってFBOの端末とにらめっこ。FSSによれば「天気は西から 良くなってくる模様、北の方はすでに晴れている。」との事でした。 気象端末を見ている時に後ろから60歳前後の女性が覗き込んでいて、私が終わると彼女は端末で天気 を確認しだした。私は「このおばあちゃん使い方知っているのかな?まあ、きっと暇つぶしにいじっている だけだろう。」と思っていた。そしてその後誰かに電話で「〜へ迂回して行けば帰れるだろう。」とか 何とか言っていたので、きっと誰かに連れてこられて足止めを食っているのだろうと思っていた。ところが 暫くすると、気後れしてる我々や他のパイロットを尻目にその女性は一人でボナンザに乗りこみ、一番先に 飛び立って行ったのです。これには正直驚きました。男女平等のアメリカとは言え、高齢の女性が単独で しかも雨降る曇天の空へ飛び立って行ったのです。大平原が広がるアメリカの大地では軽飛行機はもはや 単なる移動手段となっているのか?それともその女性が特別なのか?いずれにしてもアメリカならではの 出来事でした。 |
出発する主人を待つ飛行機たち。 | お世話になったFBO Jetstream Aviation の入り口。 | タイダウンエリアから見たJetstream Aviation。 |
レンタカーを借りた隣のFBO、Westjet Air Center | Westjet Air Centerのラウンジ。 | 空から見たRAPの定期便のターミナルとFBO。 |
マウントラッシュモア空中散歩 FSSのブリーファーによると「マウントラッシュモア上空には雲はあるが視界が良く、その先のデビルズ タワー周辺も天気が良い」ということなので、先ほどのおばあちゃんにも触発されて曇天を押して出発する ことにしました。カリフォルニアと違って周囲に高い山も無く、燃料さえあればいつでも晴れてる場所へ 逃げられるので、「何とかなるさ」という気持ちで飛び立ちました。 離陸して程なくマウントラッシュモア上空へ到達。昨日車で訪れた4人の大統領が彫られた岩山を 今度は上空から眺めて見ました。地図で場所は確認していたのですがなかなか見つからず探すのに苦労 しました。地上から見上げるととてつもなく巨大な彫刻も、上空2000ftから見下ろすととても小さく、 これでは一昨日の夕方にいくら探しても見つからないはずです。上空から肉眼で見ていても小さくてあまり 楽しいものでは有りませんでした。あれだけ巨大なモニュメントも、大陸の中ではほんの小さな存在でしか ないのです。アメリカのスケールの大きさを感じるとともに、人間の小ささをも思い知らされました。 |
上空から見たマウントラッシュモア。手前がパーキング。 | 上空から見た4人の大統領像 | 斜め後ろからみた風景。 |
デビルズタワー空中散歩 同じく昨日車で訪れたデビルズタワー上空を遊覧飛行。あの有名な映画「未知との遭遇」 でUFOが飛んでいたあの同じ空間を今こうして自分で飛んでいる。 こんな事が出来るようになるなんて、ウン十年前一体誰が想像しただろうか? |
上空から見たデビルズタワー。 | デビルズタワー近景。 | デビルズタワーの頂上は決して地上から見ることは出来ない。 |
<ワイオミング州> 当初デビルズタワー遊覧飛行の後キャスパーまで行く予定でしたが、乗客からトイレに行きたいという 希望が出て、急遽VFRフライトフォロイングをキャンセルし行き先を一番近かったジレットに変更しました。 予定には入っていませんでしたが、天気が悪かった場合の迂回路などを考えていた時にGCCの場所や設備を 確認しておいて助かりました。ついでに昼食も取れればと思ったのですが、しっかりした空港の割には空港 の中にも近所にも気の利いた店が無く、結局トイレと給油だけすまして次のヴァーナルを目指すことにしま した。 |
タッチダウン | ガスを入れてくれるFBOのお姉さん。 | FBOのオフィス。ここでガソリン代を払う。 |
<ワイオミング州> 期待していた昼食が取れずガッカリし、そろそろ旅の疲れが見え始めた家族達の意見を聞き、とにかく 次の目的地まで行く事にしました。家族がトイレを済まし、私はガソリン代を払い終わるとプリフライト もそこそこに飛行機に乗り込み、皆が着席するなりエンジンをかけました。その時です、どうして気が ついたか分かしませんが、車輪の輪留めを外していない事を思い出したのです。私はスタートしたばかりの エンジンを止め外へ出ると、さっきガソリンを入れてくれたお姉さんが慌てて何か叫びながらちらへ走って きていました。私が輪留めを外すと彼女はそれを受け取りFBOに帰って行きました。別に急いでいた訳 ではないのですが、疲れと慣れが出てきたのか、危うく気づかずに走り出すところでした。まあ、そのまま 行っても大した事にはならないと思いますが、「飛行機にはちょっとしたミスも許されない。空の上では ちょっと止めてとは行かないのだから。」と自分の気の緩みを戒めながら再びエンジンをかけ出発しました。 |
ポジション、アンド、ホールド | ジレットの管制塔。 | アップウィンドから見たFBO。 |
旅の疲れ ジレットを飛び立つと間もなく乗客達は次々と眠りに落ちて行きました。昨日は車での移動とは言え、 殆ど一日中走り回っていたし、旅行も4日目ともなると疲れが溜まって来るのも仕方がありません。 キャスパー上空を過ぎ暫く飛んだ辺りで竜巻を発見した時のこと。眠っている息子の体をゆすって 「外を見てみろ竜巻だぞっ!」というと、息子は一瞬起きあがって外をみて「ほんとだ…」 と言うなり再び深い眠りに落ちて行きました。私は乗客達をしばらくそっとして置く事にしました。 |
眠る... | 竜巻発見! | そしてまた眠る。 |
ダイナソー国定公園上空 この日の最終目的地ヴァーナルに到着する直前、ダイナソー国定公園の上空を通り周辺の景色をカメラに 収めました。恐竜の化石が沢山見つかったスプリットマウンテン周辺は、赤や白や茶などの色が幾重にも なった地層が剥き出しになり、まるで地学の図鑑の世界が目の前に広がっているようでした。そしてその 地層の隆起の真中を割るようにグリーンリバーがカーブを描きながら流れ絶景を生み出していました。 |
上流のWhirlpool Canyon | Split Mountin Canyon | Split Mountin Canyon アップ |
延々と続く剥き出しになった地層 | 上空から見た発掘現場見学施設 | その名の通り、川に分断されたスプリットマウンテン。 |
<ユタ州> 今回の旅行のもう一つの目玉、恐竜の化石の発掘現場を見学できる「ダイナソー国定公園」の玄関口 であるヴァーナルに到着。十文字に交差した細い滑走路はまるで一般道の交差点の様で、周辺の道路と 区別するのが難しく、1マイルくらいの所に近づくまで空港を認識することが出来ませんでした。 着陸してトランジェントパーキングへ向かってタクシーしていると、よくある「Follow Me」のサインを 付けたカートが誘導していたのでつい行きました。すると直ぐ左横で真っ赤なシャツを着たお姉さんが棒を 振って呼び込みをしていたので、何も考えずにそちらへ行くとさっきのカートはためらいながら右の方へ 走り去って行きました。飛行機を降りてからカートの行った先を見ると、自分が止めたところとは別の もう一つのFBOが有りました。ヴァーナルにはこの2軒のFBOがあり、たまにしか来ない客を賭けて 熾烈な争奪戦を繰り広げていた様です。お世話になったヴァーナルアビエーションは、冷たい飲み物 も無料でくれたし(田舎では良くある事ですが)レンタカーまで格安で貸してくれてなかなかサービス が良かった。時差の勘違いとフライトの遅れで出発前にしていたレンタカーの予約が無くなっていたので ここで車が借りれて本当に助かりました。 |
空港の近くの円形農場。 | ショートファイナルRwy34 | 呼び込み、給油、Unicom、レンタカーetc。一体一人で何役こなしているのだろうか。 |
剥げかかった看板が気になる隣のFBO。 | なかなかサービスの良いヴァーナルアビエーション。 | FBOのパイロットラウンジ。 |
ジュラシックパーク? ヴァーナルの空港から車で東へ約30分、ダイナソー国定公園(ナショナル・モニュメント) の西の入り口の直ぐ近くに、岩盤に巨大恐竜の骨の化石が剥き出しになった発掘現場を見学できる施設が あります。発掘作業はすでに終わっており、残された化石が岩の中に半分埋まったままになっている発掘 途中の岸壁をガラス張りの建物で覆い、発掘の様子がそのまま実物で分かるようになっています。この現場 から約1800体分の恐竜の化石が発掘され、それらは全てペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギー 博物館に運ばれたとの事。 同じ地層に大量に恐竜の化石が見つかっており、あたかも同時期に沢山死んだ様に見えますが、いわゆる 大絶滅とは関係がないとされています。ユタ州のヴァーナルとプライス、そしてコロラド州のグランド ジャンクションを線で結んだ地域は「ダイナソー・トライアングル」と呼ばれていて、この三角地帯で沢山 の恐竜の化石が発見されているそうです。そのほとんどは三畳紀の後期からジュラ紀、そして白亜紀の初期 にかけての年代の化石だそうで、この発掘現場では主にブロントザウルスとステゴザウルスが出土したそう です。 まさに夥しいという表現が当てはまるこの化石群を見ていると、ただため息が出てくるだけでした。 館内を一通り見終わった後、私はこの岩壁の前に椅子を置き、しばらくの間化石たちを見つめていました。 この場でしか感じられない、大きいとか凄いとか、そんな言葉では表せないなんとも表現しがたい感覚を、 時間がたっても忘れない様しっかりと心に焼き付けるために。 |
発掘現場見学施設入り口 | 累々と恐竜の化石が露わになっている岩盤。 | どれが何の化石か説明が書かれている。 |
これが… | こうなっているのが… | これ。 |
なんの尻尾だろうか… | 説明盤のグレーの部分が現在この建物に保存されているところで、周りのカーキ色の部分は全て掘り尽くされて跡形も無くなっていた。 | 表層だけでなく、何層にもわたって化石がある様子がわかる。 |
大人の背丈の倍はあるブロントザウルスの足の骨格。 | まるでオブジェの様な化石。 | ティラノザウルスの全骨格。 |
アメリカ先住民族の壁画 ダイナソー国定公園には、いたるところにアメリカ先住民の壁画の描かれた場所があり、公園内を ドライブしているとあちこちにその場所を示す看板が立っています。その絵はペトリファイド・フォレスト で見た壁画と作風が似ているような気がしました。 |
このように先住民族の絵が描かれた岩が公園内の所々に散在している。 | 壁画のアップ。人の輪郭や首飾りの絵がペトリファイド・フォレストのものと似ていた。 | スプリットマウンテンの岸壁。この中にも恐竜達が眠っているのだろうか... |
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