オグデン空港鳥瞰
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オグデン・ヒンクリー空港出発
ターミナルのラウンジで昼食を食べながら窓の外の愛機を見ていたが、いつまで経っても給油をしてくれる様子が無かった。食事もトイレも済ませ準備万端整い、いざ出発しようと機体まで行って燃料
タンクを調べてみたらまだ給油されていなかった。FBOまで歩いていってカウンターの中にいた兄ちゃんに時間が無いから直ぐに給油してくれと告げると、やっとトラックを回して給油してくれた。
この日のオグデンはとても天気がよくトラフィックも少なかったので、事前にフライトプランは立てていたがファイルせずFSSに天気も聞かずに、ちょっと近所へひとっ飛び感覚で出発した。
グランドにコンタクトすると着陸した時と同じRwy16をアサインされた。お昼ごはんを食べている時に上空で遊んでいた第2次大戦時代の戦闘機も、プリフライトをしている時に地上に戻ってきていたので、
出発時に空港周辺には一機も飛んでいなかった。
Rwy16は5,000ft以上の長い滑走路だったが、標高が約4,500ftと高く、真夏で気温も上がっており、デンシティーアルチチュードも高くなっていた。子供二人とは言え4人乗って荷物も満載、
ちょっと心配だったがとりあえず滑走路へ向かった。そしてランナップを済ませてタワーをコールして離陸した。オグデン空港の直ぐ南隣にはHill空軍基地の空港がある。二つのクラスDエアスペースは
重なりあって雪ダルマの様な形になっており、Rwy16から真っ直ぐ離陸すると3〜4NMでHill空軍基地のエアスペースに入ってしまう。Rwy16はRight Trafficだが、
North Bound DepartureをリクエストしたらLeft Downwind Departureをアサインされた。
真夏のソルトレイクではデンシティーアルティチュードが高くなるので、離陸時にミクスチャーを少し薄めにすると聞いたが、加減が分からなかったので取り敢えずフルリッチで離陸した。
助走を始めると直ぐに加速が鈍いのを体感した。エアスピードはなかなか上がらず、5,300ftの滑走路をフルに使って十分に加速してからやっと離陸。なかなか高度が上がらず
ストールウォーニングホーンをプープー鳴らしながらゆっくりとアップウィンドを登っていると、目の前にHill空軍基地の滑走路が見えてきた。このままでは空軍基地のエアスペースに入ってしまうというのに、
まだ300AGLにも達していなかった。するとタワーが痺れを切らして「隣のエアスペースに入らないよう早くターンしろ」と言ってきた。下にはまだ手の届きそうな所に建物が見えていたが、
私は恐る恐る左へターンしていった。漸くダウンウィンドに入って真っ直ぐ飛びながら高度を稼いでいると、今度は目の前に壁の様な山が迫ってきた。NAVをチェックして最初のチェックポイントMLD VOR
を確認し左へ15度程コースを変えた。そして巡航高度8,500ftを目指し、塩だらけのBear River Bayの上を北北西に向いながら徐々に高度を上げていった。
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Rwy16 upwind OGD。目の前に空軍基地が迫っている
| Rwy16から北へ出発すると今度は山が迫ってくる
| OGDの直ぐ北隣にあるBrigham City空港とHwy15
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塩だらけのBear River Wildlife Refuge
| 農道と見分けがつかず見つけるのが大変だったMLD
| 湖の手前にPocatello Reg(PIH)空港が見えている
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左手にBear River National Wildlife Refugeを見ながら飛んでいると、右手にBrigham City空港が見えた。その直ぐ横を走っている道路はHwy15だ。
このハイウェイがサンディエゴの自宅の横のハイウェイからずっと繋がっていると考えるとなんだか不思議だった。考えてみたらサンデェイゴからずっとHwy15に沿って飛んできた、そしてこれからイエローストーンの
手前までずっとHwy15沿いに飛び続けるのだ。
山岳地帯の谷間に広がる単調な田園風景を右手に見ながら飛んでいるうちにユタ州からアイダホ州に入った。DMEによればもう直ぐMLD VORまでもう直ぐだった。
チャートによれば直ぐ右手にMalada(MDL)空港が見えるはずだった。しかし、幾ら探しても不規則に四角く区切られた農場が広がっているだけで何処にも空港らしき施設を見つける事が出来なかった。
漸く「あれかな?」と思う滑走路を見つけたが確信が持てなかった。なぜならチャートにはMLDはビーコンと給油が出来る空港のマークが書かれていたが、見つけたのはどう見ても滑走路だけのエアストリップだったからだ。
しかし、フライトガイドを見たら地上の設備のレイアウトはとてもシンプルに描かれていて、見えている空港とそっくりだったので、ようやくそれがMLDだと信じる事が出来た。
MLDを過ぎると次のチェックポイントPIHを目指した。Pocatello Regional空港(PIH)は湖の畔にあったので、湖との位置関係からその場所を推測する事が出来、見つけるのは簡単だった。
PIHを通過してV21に沿って016に進路を取ると、そこから先は地平線まで単調な平野が続いていた。平野の真ん中を蛇行した川が流れ、その川に沿って真っ直ぐ道路が続いていた。その川は
イエローストーンまで続くSnake Riverで、川沿いの道路はHwy15である。アイダホ州の空を飛ぶのは今回が初めてだ。アイダホに入ると砂漠ばかりのユタとは打って変わって、
地上には緑の豊かな農地が広がっていた。
Hwy15に沿って10NM〜20NM毎に点々と小さな空港が散らばっていた。その中でIdaho Falls(IDA)はクラスDで定期便の出入りするちょっとした空港だった。周りは地平線まで
農場の広がる、ビル一つ無い田舎だが、ATCを聞いていると旅客機が一機飛んでいた。ふと東の方を見ると頂上に雪を抱いたグランドティトンの山脈が見えていた。西を見るとグリーンと茶色の
不規則なマス目状に塗り分けられた大地が地平線まで続いていた。
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定期便も飛ぶ割と大きなIdaho Falls(IDA)空港。
| イエローストーン国立公園まで続くSnake River
| 東に雪を抱いたグランドティトンの山脈が見えていた
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IDAを過ぎてV365をウェスト・イエローストーン方面へ向かって飛んでいると次第にIDA VORの電波が入りにくくなってきた。WYS手前の最後のStanford空港を過ぎるとVORの信号は
大分弱くなり使い物にならなくなった。ここから先WYSまではVORは無く、NAVの施設はTargyというNDBが有るだけだった。一応ADFでTargyを探そうとしたが、普段使い慣れない計器なので、
いましち信用できず結局パイロテージのみでWYSを目指した。Stanford空港を過ぎてから暫くは目印が無くて不安だったが、Hwy20が見えて一安心。地上に見える道を頼りにWYSへ向かった。
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漸く彼方にウェストイエローストーン空港が見えた
| Rwy1 WYS にストレートインでアプローチしたが・・・
| Turning base, Rwy19, WYS
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Rwy19 final, WYS とても風が強かった
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ウェスト・イエローストーン空港到着
Hwy20号に沿って北上し、Island Park Reservoirを見つけて自分の位置を確認。お天気がよく視界はとてもクリアだったが、見知らぬ土地でしかも周囲に小さなエアストリップすら
無かったのでとても心細かった。深い森に覆われた丘陵地帯を越えると、漸く遠くにWYSが見えNAVもWYSのILSを受信できるようになった。ついにイエローストーンまで来たのだ。私は空港目指して
一直線に飛び続け、ちょっと遠いけどそろそろトラフィックに無線で呼びかけておいた方が良いかなというところへ来たので、真正面に見えているRwy01に着陸する旨を無線で送信した。
すると、我々と同時に空港の東の方からKingairがWYSにアプローチしていたらしく、Unicomを呼び出しアクティブランウェイや気象情報を聞きだした。そのUnicomの回答を聞いて
私は風向きとは反対にアプローチしていた事に気がついた。私はRwy01に着陸すべく既に高度も下げ始めていたが、急遽横っ飛びするようにLeft Downwind Rwy19にコースを変えた。
最初Kingairは私達よりも遠くにいたが、あっという間にトラフィックパターンに近づき、直接ベースレッグに入っていった。
真横にピンと張ったウィンソック
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Unicomの情報によればWYSにはかなり強い風が吹いているようだった。私達もRwy19のDownwindに入る前から大きな揺れに見舞われていた。先頬Unicomと話していた
Kingairが無事着陸したのを無線で聞き、私もベースにターンした。時折物凄い勢いで機体が揺れとても不安定だったので少し早めのエアスピードでアプローチした。あまりの揺れの強さに
久しぶりに着陸が怖いと思った程だった。
少しばかりハードランディングになりながらも怖さを乗り越えて無事着陸。トランジェントに止まって飛行機から降りると荷物が飛ばされそうな突風が吹いていた。滑走路の向こう側にウィンソック
が立っていたので見てみると、真横にピンと張っていた。ともあれ、なんとか無事に目的地のウェスト・イエローストーンに到着できた。
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