森に囲まれたウェストイエローストーン空港
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ウェストイエローストーン空港出発
到着した日とは打って変わって風はとても穏やかでよく晴れたフライト日和となった。計画ではレンタカーと飛行機のレンタル料がダブらないよう、イエローストーンとグランドティトン
国立公園は車で回り、飛行機で公園上空を遊覧飛行する予定は無かった。しかし、グランドティトンへ車で行った時に悪天候と移動に時間を食ってしまい殆ど観光が出来なかった事や、
とても綺麗な空撮写真を目にして是非そこを空から見てみたいと思い、計画を変更してイエローストーン上空を遊覧飛行しつつグランドティトンまで飛ぶ事にした。
国立公園や鳥獣保護区の上空は地上から2,000ft以上の高度を飛ばなければならない。他にも何かローカルルールの様なものが無いかどうかFBOで聞いてみることにした。
FBOに行くと遊覧飛行の看板が出ていたので、カウンターの中にいたパイロットに話を聞いてみた。彼の話しでは2,000ftAGL以上を飛ぶ事以外に禁止事項は特に無いとの事だった。
話をしていると彼は自分の体験談を話しだした。
上空からクマを見た話になると彼は事務所の奥からアルバムを引っ張り出してきて写真を見せてくれた。そこには焼け野原になった
森の中を歩く大きなクマが写っていた。その写真の場所はイエローストーンとグランドティトンの間辺りの森だった。そこなら丁度これから飛ぶ予定なのでもしかしたら私たちも空から
クマを見れるかも知れない。私たちは期待に胸を膨らませて飛行機へと向かった。
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広々としたWYSを離陸するBerkuto
| 何事も無くWYSを離陸。
| ウェストイエローストーンの町
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プリフライトを済ませさあ出発。風は南から吹いておりランウェイ19から離陸となった。気温はそれ程高くなかったがウェストイエローストーン空港は標高が6,700ft弱と高く、
ちょっと空気が薄かった。そのため離陸後なかなか高度が上がらなかった。しかし、滑走路は長く空港の周囲は殆ど原っぱや森林なのであまり心配は無かった。
500ftAGL弱で東へ90度変針しクロスウィンドディパーチャー。そして直ぐに前方にウェストイエローストーンの町が見えてきた。町の上を通過するとそこはもう国立公園の中である。
2,000ftAGLに達したかどうか微妙な所だが、誰かがきっちり計っているわけでもないし、見るからに低空飛行をしているわけでもないので、気にせずそのまま上昇しながら
一路観光スポットを目指した。
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川沿いの道が公園へと続く
| カルデラの切れ目の谷を通る公園への道く
| 遠くにグランドプリズムが見えてきた
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ウェストイエローストーンの町から公園へと続く川沿いの道をなぞるように東へ飛ぶと、直ぐにカルデラの山脈が目の前に迫ってきた。そして山脈が川に割られた谷間を抜け公園の中へと
入っていった。地上を見ると所々草木が生えず白っぽくなっていた。地上を車で走ったときに道路沿いに幾つも温泉が湧いている所が有るのを見つけたが、空から見ると道路から離れた
森の中にもあちこちで温泉が湧いているのが分かった。そしてロウアーループの道路に沿って南へ下っていくと今回のフライトのメインイベントであるポイントが見えてきた。
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上空からみたグランドプリズマティック・スプリング。地上からではこの素晴らしさを体験する事は出来ない。
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グランドプリズマティック・スプリング
この、とても自然の仕業とは思えない鮮やかな色に染められた温泉は「グランドプリズマティック・スプリング」と呼ばれている。それはまるでプリズムで作った七色のようだ。
見事なグラデーションに囲まれたアメーバのような形をしたプールが作り出す景色は、まるでサイケデリックの絵画のようで、一度見たら忘れられないくらいとてもインパクトが強かった。
実は今回の旅行の出発前はこの景色の存在を知らなかった。現地についてからホテルや空港などで目を引く写真があった。それがこの温泉の写真だった。その写真をみて
一度自分の目で見てみたいと思い、計画を変更してこの素晴らしい景色を上空から眺める事にしたのだが、やはり期待通りだった。
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撮影のため上空で旋回
| 上空から見たオールドフェイスフル
| クマはどこだ〜っ!
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グランドプリズマティック・スプリング上空で3周ほど旋回した。段々高度が落ちてきて恐らく2,000ftAGLを下回ってしまったかも知れない。地上にはパークレンジャーが沢山いるので、
テールナンバーなどチェックされて通報されたら嫌だなと思い次の場所へと向かった。南東に飛ぶと直ぐにオールドフェイスフルが見えてきた。温泉を中心に同心円を描くように
道路やビジターセンターや駐車場などが綺麗に整備されているのが一目で分かった。オールドフェイスフルを過ぎ南へ変針してグランドティトン国立公園へと向かった。下を見ると山火事で
枯れた森が広がっていた。その景色は出発前にFBOで見せてもらったクマが写っていた写真と似たような景色だった。どこかにクマが歩いていないかと目を凝らしたが結局みつけられなかった。
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真夏でも雪が残る高原
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峠越え
暫くするとあまり木の生えていない高原に差し掛かった。地上からの高度を保つために上昇しようとするとなかなか上がらなかった。地上には白いエリアが沢山あり、温泉にしては
多すぎるなと思いよくみるとそれは雪だった。真夏の真昼に雪が残る草原、チャートで標高を調べると約9,000ftだった。どうりで上らない訳だ。家族4人を乗せたアーチャーでは11,000ft
が限界だ。私はギリギリの高さで万年雪の残る高原を越えてグランドティトンへと向かった。
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マウントティトンを横に見ながらジャクソンホールへ
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ジャクソンホール空港到着
峠を越えると目の前に盆地が広がった。右手にグランドティトンの険しい山脈が見え、その麓には湖が幾つかあった。
下にはくねくねと蛇行したスネークリバーが流れ、目指すジャクソンホール空港の方に向かって流れていた。
蛇行するスネークリバーの先に空港があるはず
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ジャクソンホール空港は僻地の小さな空港だが、有名な観光地の玄関口であるため定期便も飛んでおり、VORやILSなどのナビゲーション設備も充実している。
東西を険しい山脈に挟まれておりチャートを見たときは着陸しずらそうに思えたが、実際に飛んでみると谷の幅はとても広く飛行には全く影響なかった。
むしろナビゲーション設備を使わなくてもスネークリバーに沿って飛べば辿り着けるので飛び易かった。
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ビジターセンター
| JACの滑走路が見えてきた
| 無事着陸
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