North Island Naval Flying Club
この企画を思いついたのはサンディエゴのノースアイランド海軍フライングクラブNINFCのメーリングリストで配信されたメールを読んだ時だった。私がNINFCに入会した動機はT-34を
チェックアウトする事だったが、入会して暫くするとフロリダの軍のクラブで同じT-34がクラッシュしてしまい、原因究明と対策が取られるまでNINFCのT-34も飛行禁止となってしまった。
T-34以外、NINFCの機体には特に興味を引くものはなく、また軍のクラブは民間に比べてルールが厳しく軍の空港で離着陸するというだけで気後れしてしまい、自然と足が遠のいてしまった。
ある日のこと、毎週のように送られてくるNINFCのクラブマネージャーからのメールに、XCのパートナーを探しているような事が書かれていた。読んでみると「メンバーの友人がロサンゼルス
の西の方にあるポイントマグー基地まで飛行機で行きたいので、誰か乗せて行ってくれるメンバーはいないか?」という内容だった。以前、NINFCの規則を読んでいて、他の基地の空港へ
行くときのルールが書かれていたので、NINFCの機体でトップガンの本拠地であるミラマーの基地に行くことは出来るか?と他のメンバーに聞いた事があったが答えはNOだった。
ノースアイランド海軍基地に勤務している軍人で私にNINFCを紹介してくれたメンバーだった彼は、たぶん駄目だろうと答えただけで駄目な根拠を示すことは出来なかった。
そこでNINFCのインストラクターのBradに聞いてみたがやはり答えは同じだった。
クラブマネージャーのメールはインストラクターを含むメンバー全員に配信されていた。そこでBradに「ポイントマグー基地に行けるならミラマーだって行けるんじゃないか?」と聞いてみると、
彼はマネージャーに確認してくれた。すると答えは「原則的にミラマーだろうがどこでも行ける。しかし、行き先の基地に事前に許可を取る必要がある。」だった。私はそれを聞いて直ぐに
ノースアイランド基地から他の基地へ自分の操縦で行く計画を立て始めた。
Civil Air Patrol
民間人がエドワーズ空軍基地などの軍用空港へ行くには、軍隊のフライングクラブの機体に乗って行かなければならない。フライトの話の前に民間人でありアメリカでは外国人である私が
どのようにして海軍基地のフライングクラブのメンバーになったか、まずはその経緯から話しましょう。
サンディエゴは私が生まれ育った横須賀と同じ軍港の町である。ダウンタウンの沖合いにある独特の形をした砂洲の先端にあるノースアイランド海軍基地は4隻の原子力空母の母港となっており、
巨大な原子力空母が縦に2隻接岸できる岸壁もある。近郊の住宅地には基地に勤務する軍人がたくさん住んでおり、私はノースアイランドに勤務していたPaulと知り合いになった。
Paulは私がIFRの訓練を受けていたのと同じパイロットスクールに通っていて、子供が同じ幼稚園に通っていた事もあり、私達は話をする様になった。
ある日私は日本人の知人からNINFCでT-34に乗ったという話を聞いた。彼のアメリカ人の友人がNINFCのメンバーで同乗させてもらったらしい。私はPaulがNINFCのメンバー
だった事を思い出し私もT-34に乗せて欲しいと話したが、彼はT-34をチェックアウトしておらず駄目だった。冗談半分で私がメンバーになって自分で操縦したいと言うと、Paulは
そうすれば良いと言った。民間人が軍のクラブのメンバーになれるはずがないと思っていたが、彼が言うにはメンバーの多くは外部の民間人との事。しかしアメリカの国籍を持っていない日本人の
私が基地に出入り出来るはずもないだろうし、まして軍のクラブのメンバーになる資格もないだろうと言うと、Paulは「そんな事はない。多分メンバーになれると思う。」と言い、その場で携帯で
クラブマネージャーのTomに電話をして問い合わせた。結果はアメリカ人でなくてもちゃんとしたパスポートとビザを持っていればメンバーになれるとの事だった。
後日、私はPaulに連れられて基地の中のNINFCのオフィスを訪れた。マネージャーのTomに挨拶をすると彼ははクラブの規則が書かれている書類に目を通し、NINFCのメンバーになるための
資格について話しだした。メンバーになれる資格は本人が軍人、退役軍人、それらの家族であるなど、私には到底当てはまらないものばかりだったが、最後にCivil Air Patrol(CAP)のメンバー
という項目があった。CAPとは軍の外郭団体で、イメージ的にはボーイスカウトのような活動をしており、毎年20〜30ドル程度のお金を払いさえすればアメリカ人でなくとも誰でもメンバーになれるものだった。
Tomは「お前はアメリカ人でも軍人でもないので、NINFCに入会するにはCAPになるしかない。ただしお金がかかるが・・・」と私に告げた。私は喜んでお金を払いメンバーになった。
フライングクラブへ行くには基地の中に入らなければならない。するとTomは通門証発行依頼のレターを書いてくれた。そのレターを持って基地のゲート脇の事務所へ行くと、その場で通門証の
IDを発行してくれた。そして車には通門のためのシールも貼ってくれた。これでいつでも自由に基地に出入りできるようにった。通門証は私だけでなく家族や友人を基地の中へエスコートする事もできるものだった。
最初ゲートを通るときはとても緊張した。ゲートに入っていく車列にならび、窓を開けてIDを見せるだけなのだが、なにか言われたらどうしようとドキドキした。しかるべき手続きを経ているのだから
堂々とすれば良いのだが、日本人の常識で考えると日本人が仕事でもないのに米軍基地に気ままに入れるなんてとても信じられなかった。
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