December 25, 2002
Day 1

The Secret Project

Flight planning用の地図
何度もルートを書き直しながらプランを練った地図

 アメリカに住んでいるうちに一度は自分で操縦する軽飛行機で大陸横断をしてみたい。それは私の心に普通に沸き起こった欲求 だったが、どうやらジェネアビに精通している人、そうでない人のどちらにとっても呆れてしまような事だったらしい。 休みのたびに長距離フライトに付き合わされてきた家族もだんだんXCを嫌がるようになりはじめた。特に息子は数時間もの間、 せまっ苦しい軽飛行機の後部座席に座り続けなけらばならない苦痛に耐えられなくなってきたようで、大陸横断などと口にしたら 誰も一緒に飛んでくれそうにない雰囲気になってしまった。そこで家族には今度の冬休みは以前から行きたかったホワイトサンズへ 行き、天気がよければちょっと寄り道して来ようという話で、なんとか飛行機で家族旅行に出かける約束を取り付けた。

 私は家族に内緒で大陸横断の計画を練り、大体のルートを決めると必要なチャートを買いに行った。いつものパイロットサプライ ショップで大量のチャートを買い込むとFBOで噂になると思い、わざわざ遠くのオレンジカウンティー空港のショップまで行ってチャートを購入した。 チャートの数はセクショナルが14枚、WACが7枚、TACが5枚、合計26枚にも及んだ。カウンターに積み上げたチャートを見て店番の お兄ちゃんが「大陸横断するのか?」と聞いてきた。そうだと答えると機体は何かと聞かれ、Archerだというと隣にいた相棒と 顔を見合わせて「Archer!」と驚きながら笑われてしまった。よくまあArcherのような小さな機体でそんなに遠いところまで行く 気になるなと言わんばかりだったが、私にとっては毎日飛行機に乗れる夢のような計画だった。

Departure

出発前の家族
出発前に愛機の前で家族で記念写真撮影

 大陸横断は何日もかかるので雲が出てもスケジュールが狂わないようIFRレーティングを取得してから行きたかった。 しかし訓練でスランプに陥っていたのを無理して出発の三日前にチェックライドを受けさせてもらったが結局落ちてしまった。 仕方なく全行程VFRで行こうと諦めがついたが、もしIFRを持っていたらきっと未熟な腕で無理をして危ない目に遭っていた だろうから、今考えると正直落ちて良かったと思う。

 今回はクラブの機体の中でも比較的計器の装備もよく内装も綺麗なArcerV を使うことにした。人気が高くいつも誰かが予約を入れていて長期間押さえるのが難しい機体だが、1ヶ月以上前から予約を入れ てクリスマス休みで誰もが遊びに出かける12月の23日から年明けの1月2日までを押さえた。所が天気が悪くなり出発できなくなって しまった。出発時間前ならクラブのウェブサイト上で予約を変更できるので、仕方なく一日ずつ予約を後ろへずらしていった。 しかし、あまり出発を遅らせていると大陸を往復するのに必要な時間が確保できなくなってしまう。25日の朝はちょっとHazyだったが、 もうリミットだったのでとりあえず荷物をまとめて空港へ向かった。数日前からアメリカ南西部から南部にかけて低気圧が横切り 大雨が降った。気温も低く西海岸にもフリージングのAIRMETが出ていた。25日になって低気圧は東海岸北部へ移動し、最初の目的地 のニューメキシコは問題なくVFRとなった。しかし上空の気温は9,000ft以上は全て氷点下となっており、この真冬の寒い時期の 長距離飛行は初めてだったので少し神経質になっていた。


MYF to YUM

上空から見たHazyな景色
地上で見るより上空は視界が悪かった

 漸く準備が整いエンジンスタート。燃料が半分も入っていなかったのでガソリンスタンドに行くとTOBAGOが立ち往生していた。 ポンプが動かずFBOに連絡して待っていたのだが、どうやらクリスマスの日曜で誰もいないようだった。 私はバッグからフライトガイドを引っ張り出し、他に給油できそうな空港を探した。飛行ルート沿いの空港を調べユマの空港の FBOに携帯で電話してみると給油可能との返事が返ってきた。早速飛行機に乗り込みグランドに出発の意を告げると 「燃料は大丈夫か?」と聞かれたので、ユマ(YUM)まで行って給油すると言うとそれは良いと返事が返ってきた。

 モンゴメリーフィールド(MYF)を飛び立ってしばらくしてVFRフライトフォロウィングを受けた。最初のチェックポイントは インペリアル空港(IPL)。IPL周辺を飛ぶのはプライベートの訓練以来だった。そしてIPLよりも東へ行くのは今回が初めてだった。 MYFからIPLまでの間、地上には広大な農地が広がっていたが、IPLとYUMの間を南北に流れる 運河を超えるといきなり砂漠が広がっていた。ユマの手前の砂丘まで来れば、YUMが視界に入っているはずだったが、初めての空港 だったのでなかなか見つけられなかった。YUMは軍民両用の空港で、一番長い 滑走路は13,000ftもあるかなり大きな空港なのに、空港から5NMのところまで近づいて漸く視認することが出来た。そしてLAセンター に「Airport in sight」と告げてフライトフォロイングをキャンセルして着陸態勢に入った。

 私は一番長い滑走路に着陸し、そのままFBOまでタクシーしようとしたら、目の前に直径5センチ以上はありそうな極太の ワイヤーが横たわっていた。軍用機用のArresting Wireである。 慌てて急停止して反対向きにタクシーバックし、ものすごく遠回りして漸くFBO に到着した。YUMは元々何も無い田舎の空港だが、クリスマスでタワーもクローズしていて、さらに閑散としてとても寂しい空港だった。

Flight Data
Wypnt Local UTC Duration
(Min)
Distance
(NM)
GS
(Kts)
HOBBS
MYF 12:08W 20:08       5488.8
Kumba 12:40W 20:40 32 55 103  
IPL 12:54W 20:54 14 27 116  
YUM 02:26M 21:26 32 50 94 5490.3
Total   1:18 78 132 102 1.5
Chart


YUM to LRU

 無事給油を終えてYUMを出発。YUMから次のVORまでの間、Restricted Areaに挟まれた狭い回廊のようなエアスペースを通らなけらば ならず、万が一間違ってRestricted Areaに入ってしまわないよう再びVFRフライトフォロイングを受けた。以前はフライトフォロイング のATCは苦手だったが、IFRの訓練のあとでは全く苦にならなかった。YUMから次のチェックポイントTSUまでは、Rエリア(飛行禁止空域) を避けて少し北へ迂回するルートをとらねばならないが、今日は休日でRエリアがインアクティブなのでRエリアを通過しても良いと ATCからダイレクトフライトを許された。丁度以前車で遊びに行ったオルガンパイプ・カクタス国定公園の上空である事に気がつき 見てみると一面サボテンが生えているのが上空からもよく見えた。 そこから30分くらい地上にはサボテンの荒野が続いていた。

 ATCにベクターされてVウェイを離れてから前方の地平線に雪を被った山脈が見えているのが気になっていた。暫くして山脈に近づくと 北側の峰に建物が見えた。もしやと思いチャートを見ると、やはりあの有名な キットピーク天文台だった。天文台を過ぎると目の前にTusconの平野 が広がっていた。程なくTSU(ツーソン国際空港)のアプローチからストレートインの許可が出た。YUMで給油したので燃料にまだ 少し余裕があった。YUMからTSUまで1時間半くらいだったし、TSUからRLUまではおそらく1時間くらいなので燃料は持つはず。 しかしここから先は完璧なナイトフライトになる。山岳地帯に入るので巡航高度は最低でも7,500ft以上を維持しなければならない、 外気温は零下となる。色々と考えた末TSUには寄らずに先を急ぐことにした。そしてTSUのアプローチに着陸しない旨を伝えツーソン上空 を通過した。


山の上には白いものが・・・

キャブヒート、ピトーヒート、オン

デミング上空通過

 ついに日が暮れて辺りはあっという間に暗くなった。地上は砂漠地帯なので街の明かりも何も無い。I-10(インターステートフリーウェイ10号) を走る車のライトの列だけが頼みの綱だ。日没時にほぼ0度だった外気温はマイナス5度まで下がった。試しにキャブヒート(キャブレター を暖める装置)をオンにしたらエンジンの回転数が上がった。どううやらキャブはアイシングを起こしているようだった。何度も オン・オフを繰り返してみて、結局オンのままにしておくことにした。今度はピトーヒートをオンにするとエアスピードが下がった。 こちらも何度かオン・オフを繰り返してみたら変化が無くなったが、何といっても外気温は未体験の氷点下なので、 念のためオンのままにしておくことにした。



暗闇に浮かび上がったRLUのランウェイライト

 赤かった西の空もすっかり真っ暗になり、デミングの町を過ぎてしばらくすると遠くに目的地のLas Crucesの街の灯りが見えてきた。 RLUは町から少し離れた場所にあり、見当をつけた辺りに点滅する白いライトを見えたのでてっきり空港のビーコンだと思いそこへ 向かって飛んでいた。空港は高速沿いなのにその灯りは高速からかなり離れていた。近くへいってみるとそれは空港では無く タダのフラッシュライトだった。直ぐに高速上空に戻り街の方角を目指した。遠くの方にかすかに緑色に光るビーコンを見つけた。 LRUはクラスG空港なので、マイクを7回クリックすると3本の大きな滑走路のランウェイライトが暗闇の中に浮かび上がった。 そのままRwy8にストレートイン。FBOに近いところで滑走路からタクシーウェイ へ出るとFBOの前でマーシャラーが呼んでいた。そしてマーシャラーの振る 赤い棒の指示に従ってFBOの前に駐機した

 FBOのお兄ちゃんはとても親切で荷物を全部運んでくれたのでチップを弾んだ。ALM、ELP、LRUのうちどこに着陸するか出発時点では 決めかねていたので、レンタカーもホテルも何も予約していなかったが、FBOで車を貸してくれて、ホテルの電話番号ももらい、 おかげで安いレートで宿泊することが出来た。とても気持ちの良いFBOだった。

 空港を出て町へ行く道すがら、夕食を食べようとファストフードの店を探したが、さすがに12月25日の夜に開いている店は一軒も無く、 諦めて持ってきた煎餅をかじりながらその場をしのぎ、ホテルに着いてから部屋でご飯を炊いて即席のちらし寿司とカレーを作って食べてた。 こんなアメリカの砂漠の真ん中のど田舎で白いご飯が食べれるのもカリフォルニア米のおかげである。とりあえず初日は特に大きな 問題も無く無事行程を終了した。

Flight Data
Wypnt Local UTC Duration
(Min)
Distance
(NM)
GS
(Kts)
HOBBS
YUM 15:25M 20:25       5490.3
Quijotoa 16:33M 21:33 68 128 113  
TUS 17:02M 22:02 29 62 128  
SSO 17:44M 22:44 42 89 127  
DMN 18:20M 23:20 36 84 140  
LRU 18:45M 23:45 25 35 84 5493.9
Total   3:20 200 398 119 3.6

Chart

Day 1



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Jul 4, 2005