December 29, 2002
Day 5

Atlantic Ocean

 海岸沿いのホリデイ・イン・エクスプレスの客室は全室オーシャンビュー だった。窓の外は大西洋。私は大西洋から昇る朝日を撮影しようと、 空が明るくなる前からベランダに三脚を立てて待ち構えていた。真っ暗だった空が少し青くなりはじめ、太陽が出てくる辺りが 少しずつ赤くなり始めた。それから暫く間をおいてつにオレンジ色の太陽が ほんの少しだけ水平線から姿を現した。この日はとても天気が良く、 太陽の輪郭がはっきりと見えた。太陽は次第に姿を現し、半分を過ぎると大気のレンズ作用によって オバQのような形になり、全体が出て来るとオレンジ色のしずくを垂らして 水平線に少し太陽が残っているように見えた。カリフォルニアの太平洋に沈む夕日も良いけれど、大西洋から昇る朝日もなかなか のもである。右左に何もさえぎる物が無く視界全てが水平線で、そのど真ん中から半熟タマゴの様な丸い太陽が昇ってくる。 冬の朝の寒さを我慢しながら眺める朝日はなんとも神々しいもので、 出来ればここで初日の出を見たかった。





First Flight Monumnet

 早起きして大西洋の砂浜で遊んだ後、FFAに戻りもう一度記念碑と初フライトの場所とハンガーや臨時の博物館の展示場を見て回った。 博物館は改装中で中には入れなかった。大きなガラス越しに実物大の ライトフライヤーのレプリカを少しだけ見ることが出来た。その近くにトレーラーを幾つか並べ、ライト兄弟が使った 実験用の風洞 エンジンの部品工具などを展示していた。土産物屋のコーナーもあった。


左の石がスタート地点で右の三つが着地点。回を追う毎に飛距離が伸びていった。

横から見ると垂直尾翼のような記念碑。

なんとも威厳のある記念碑である。


FFA to MQI

 FFAにはFBOが無かったので前の晩に給油しておく事が出来ず、燃料タンクが空に近い状態で一晩放置して置いた為、プリフライト でストレーナーをチェックすると案の定タンクに水が溜まっていた。タンクの中に空洞があると、夜間気温が下がったときに空洞の 空気の水分が結露してタンクの底に溜まってしまうのである。ストレーナーの水はフューエルテスターで抜くことが出来るが、 それでも100%取り除く事は出来ないので、タンクに水が溜まっていた時はエンジンの調子に気をつけなければならない。

 プリフライトを終えるとライト兄弟と同じようにRwy2から大西洋へ向かって離陸。 モニュメントを中心にして旋回するように右ダウンウィンドへ。 海岸線沿いに暫く飛んで、昨晩泊まった ホテルの上空を通過、そして北へ進路をとる。燃料がかなり少なかったが、出来るだけ次の目的地に近いところへ行きたかったので、 入り江を挟んで対岸のエリザベスシティーに降りるつもりだった。しかしやはりタンクに水が溜まっていたのが悪かったらしく、 エンジンが時々息をつくような感じでパワーが出なくなるようになり、とても海の上を飛ぶ気にはなれなかった。 直ぐに南に引き返しFFAの直ぐ隣のMQI(Dare Co Reg.)へ向かい、そして Rwy23に無事着陸

Flight Data
Wypnt Local UTC Duration
(Min)
Distance
(NM)
GS
(Kts)
HOBBS
FFA 11:15E 16:15       5508.1
MQI 11:37E 16:37 22 7 19 5508.5
Total   0:22 22 7 19 0.4
Chart



Manteo; Dare Co Regional Airport

 片田舎のターミナル兼FBOにしては洒落た作りの綺麗なFBOだった。お土産コーナーあり、ライトフライヤーのスケールモデルあり、 吹き抜けのホールの天井には大きな大戦機がい来るも吊るしてあり、とてもいい雰囲気だった。係りのお兄さんもとても愛想が良く 気持ちの良いFBOだった。

 給油中ホールのソファで一休み。フライトプランニングルームの端末でこれから飛ぶルートの気象情報を確認して再び機へ向かう。 ガソリンタンクが満タンなのを確認、そして再びストレーナーから水を抜く。オイルもチェック。いざ出発。


天井に大きな大戦機が吊られているホール

窓からフィールドが見渡せるUnicomのデスク

充実した設備のフライトプランニングルーム

ただ今プリフライト中、オイル良し!

Taling off Rwy35 MQI

FBOの手前にVOR MQIが見える

MQI to TEB


 燃料を満タンにして再び出発、一路ニューヨークを目指す。高度5,500ftでレベルオフして巡航、外気温はほぼマイナス6度だった。 ここからニューヨークまではずっと大西洋の海岸沿いのフライトなので迷う心配は無い。暫くすると ノーフォークの町が見えてきた。ノーフォークにはサンディエゴよりも大きな海軍基地があると聞いていたので、 どれほどの規模か一度見てみたかった。ノーフォークはアメリカの首都ワシントンへ続くチェサピーク湾の入り口に位置し、 いくつもの入り組んだ入り江の奥に軍港がある。細い入り江のあちこちには 無数の橋が架かり、太い水路は海底トンネルで結ばれている。 NORFOLK Class Cの上を通過。ノーフォーク国際空港の上空で少し東へ進路を 変えてCCV-VORに向かって飛び、V-139をひたすら北上する。

 ずっと晴れた良い天気だったがデラウェア湾を越えると前方にスキャッタードくらいの雲が現れた。雲の高さは5,000ft位で、 その上を行くか下へ行くか選択を迫られた。出来れば真っ青な空を見ながら雲の上を行きたかったが、NewYork Class Bの手前で 雲に切れ目が無くて下に降りれないとまずいので結局下を行くことにした。巡航高度を3,500ftに下げるとフライトフォロイングを ターミネートされてしまった。暫くして雲が少し減ったので上へ出てみたが、知らない土地で道に迷いたくなかったので、 地上を見ながらパイロテージが出来るよう雲の下に戻ることにした。


前方の地平線に雲が見え始めた

見る見るうちに近づいてきた雲

上に行くか下にもぐるか

雲の下はどんよりとした灰色の天気

雲の隙間から上に出てみる

雲海の上は真っ青な空


見渡す限りの田園風景。東海岸は土地が広い。

 アトランティックシティーの近くに来ると雲が無くなったので、フライトフォロイングを受けられる最低高度の5,000ftまで 上がって再びフライトフォロイングを受けた。するとコントローラから「6時の方向にトラフィック」と言われた。Archerには 後ろに窓が無いので目で確認することも出来ないし一体どうしろというのかと思っていたら、そのトラフィックはサイテーションで あっという間に追い越されてしまった。このまま次の目的地のTEBまでフライトフォロイングで誘導してもらえば楽チンだと思って いたのに、アトランティックシティーのエアスペースを離れて暫くすると一方的にフライトフォロイングをターミネートされてしまった。 西海岸では一旦フライトフォロイングを受けると目的地に到着するまでサービスしてくれるのに、東海岸では官制空域を出ると センターに渡してくれずにターミネートされてしまうようで、何度もサービスをリクエストし直さなければならなかった。

 いちいちターミネートされて面倒だったのでフライトフォロイングを受けずにVFRで飛び続け、暫くするとついにニューヨーク 手前で最後のVORであるCOLに近づいてきた。ニューヨーククラスBは初めてだったので、エアスペースに入る前にレーダーサービース を受けようと思いTACでニューヨークアプローチの周波数を調べコンタクトを試みた。しかしニューヨークアプローチのATCは 予想通り超多忙で割り込む隙も無く、無理やりコールしても全く取り合ってもらえなかった。結局クラスBの境界が迫ってきて しまったので諦めて高度を1,000ftに落としてクラスBの下をVFRで潜り抜ける事にした。COL-VORを過ぎLower Bayの海上を 2,000ftほどで飛んでいると目の前に大きな吊橋が見えた。その向こう摩天楼が立ち並ぶマンハッタンだ。マンハッタン飛行禁止の TRFは2週間ほど前に切れたと聞いていたが、間違いがあるといけないので確認の意味も含めTEBのタワーをコール。特に注意もなく スコークをもらえたのでそのままマンハッタンへ向かった。


この海を越えればマンハッタン

住宅街の向こうにうっすらとビル街が見える

移民を出迎えた自由の女神

いよいよマンハッタンが目の前に

憧れだったこの景色を見て思わず叫んだ

ハドソン川を遡るように飛ぶ

 吊橋を過ぎると左手に自由の女神が見え、そしてついに目の前に高層ビルが林立するマンハッタンが見えた。そしてみるみる うちにビル街に近づいていった。ハドソン川に向かって飛ぶと手に届きそうな所までビル街が近づいてきた。私はそれを見て ウォーッ!と大声を張り上げて喜んだ。するとTEBのタワーが前方のトラフィックに注意と言ってきた。前を見るとチェロキーらしき 姿がこちらと同じくらいの高度で向かってくるのが見え、100ftくらいの距離ですれ違っていった。さすがニューヨークと思っている と続いてヘリコプターが飛んで来た。そして直ぐに今度は下から遊覧飛行のヘリコプターが上昇してきた。ニューヨークでは 1,000ftほどしかない川幅のハドソン川の上空高度1,000ftくらいの狭いエアスペースに高密度のトラフィックが往来していた。

 ここは1年ちょっと前にテロ攻撃を受けた場所で、ついこないだまで飛行禁止空域だったところなので、飛行する時は通常の クラスB以上に神経を使った。空からマンハッタンのビル街を見ながらのフライトは感動的だったが、緊張感であまり感動に 浸っている暇が無かったのが少し残念だった。それでも十分思い出に残る印象的なフライトだった。ミッドタウン辺りで西に進路を 変えてTEBに向かう。暫くしてワーから着陸許可が出るが空港が見つからない。ニュージャージー側は昨日の雪で一面白くなっていて 空港を見つけるのが大変だった。しかし何とかチャートを見ながら滑走路を見つけ無事着陸。そして一番近くのFBOアトランティック アビエーションに駐機した。


なかなかTEBが見つからない

Runwy1にアプローチ

無事着陸

アトランティックアビエーションのハンガー

ハンガーの前に駐機

エプロンからエンパイアステートビルが見える
Flight Data
Wypnt Local UTC Duration
(Min)
Distance
(NM)
GS
(Kts)
HOBBS
MQI 12:15E 17:15       5508.1
ORF 12:58E 17:58 43 64 89  
CCV 13:14E 18:14 16 29 89  
SWL 13:38E 18:38 24 50 125  
SIE 14:17E 19:17 39 70 108  
COL 14:59E 19:59 42 84 120  
TEB 15:30E 20:30 31 35 68 5511.7
Total   3:15 195 332 102 3.2
Chart

Ground Zero

 FBOでレンタカーを借りてマンハッタンのグランドゼロまでドライブする事にした。直ぐに行けるかと思いきや、ニュージャージー からマンハッタンへ向かう海底トンネルは大渋滞だった。マンハッタンの中も渋滞している所が多く、裏道を探しながら走っていたが ついに渋滞にはまり動けなくなった。ビルの隙間の向こうにライトに照らされた工事現場が見えた。道端にはTシャツなどのみやげ物 を売る屋台が並んでいた。暫くして正面に一際明るい照明に照らされているフェンスに囲まれている場所を見つけた。そこがあの テロ攻撃で崩れ去ったツインタワーが建っていた場所グランドゼロだった。駐車場を探している時間が無かったので、近くの路上に 駐車してフェンスのそばまで行って現場の写真を撮って少しだけ黙祷をすると直ぐに車に戻った。そしてグランドゼロを後にして TEBへと向かった。


レンタカーのナンバープレート

マンハッタンへ抜けるトンネルは大渋滞

マッハッタンまで道のりは遠い

道端には商魂逞しい露天が並ぶ

多くの人が追悼していた

フェンスの向こうがグランドゼロ




TEB to GAI

 TEBとグランドゼロの間を2時間で往復するつもりだったのが渋滞で3時間かかってしまった。FBOに戻ってレンタカーを返し ラウンジで途中で買ってきたフライドチキンを食べ終わるとすっかり夜なっていた。


都会のFBOらしいラグジュアリーなラウンジ

天気を調べる端末の横にはビリヤード台

エプロンからマンハッタンの夜景が見える

アップウィンドを昇ると回りは灯りの海

直ぐ目の前にマンハッタンの夜景が広がる

夜のビル街

 離陸すると直ぐに目の前にマンハッタンの夜景が広がっていた。街は灯りで満たされ色とりどりにライトアップされた摩天楼 がひしめき合っていた。Runway1から右ダウンウィンドで出発。TEBクラスDの縁に近づくとタワーから左に進路を取るように言われ 真っ直ぐマンハッタンに向かった。来た時と逆にハドソン川に出ると川に沿って南へ向かう。左手にマンハッタンの夜景を見ながら 飛んでいいると、ビル街の中に一際明るく照らされている所があった。そこはグランドゼロだった。


自分の操縦で夜の遊覧飛行



白く光るグランドゼロ

明るく照らされた自由の女神

夜のマンハッタンを出発

 マンハッタンを通り過ぎて右手に自由の女神が見えてきたらもう一度マンハッタンの夜景が見たくなった。ここで ターンしたいところだが、不審な行動を取ってテロリストと思われてもいやなのでどうしようかと悩んだ。しかし自分の操縦で ここを飛ぶのもこれで最後だろうと思い、後悔しないように結局折り返すことにした。自由の女神の前でスティープターンを してもう一度マンハッタンの夜景を堪能し、そして夜のニューヨークを後にして次の目的地ワシントンDCへ向かった。

 昼間は曇りだたので天気が心配だったが、夜は雲ひとつ無くとてもよい天気となった。高度4,500ftで巡航、外気温は マイナス2度と思ったほど低くなく、アイシングの心配もせずに安心して飛べた。フライトが安定したところでフライトフォロイング をリクエスト。直ぐにアトランティックシティー・アプローチにハンドオフされる。目的地はワシントンDCクラスBの下なので 最後までフライトフォロイングのサービスを受ける事を期待していた。ところが暫くするとやはりターミネートされてしまった。 他のトラフィックの交信を聞いていたら、どうやらアトランティックシティーではアプローチの官制範囲を出ていくトラフィック は全てハンドオフせずに一旦レーダーサービスをターミネートしているようだった。一度トランスポンダーを1200に戻し、 次の無線チャンネルで再びレーダーサービスをリクエストしなければならず面倒だった。

 バルティモア・クラスBの北側を掠めるようにギリギリのところを通過して最後のVORに到達。そこから見当をつけた方向へ 転進。程なくビーコンを発見、無事モンゴメリー・カウンティー空港に到着。時間は夜の11時を回っており、ターミナルは灯り が点いていてドアも開いていたが、既に営業は終了して清掃中だった。9・11同時多発テロから1年以上たったとはいえ、 ワシントンDC上空は依然として厳戒態勢だった。そこでワシントンDCクラスBに入らずに着陸できてワシントンDCに一番近い空港で、 しかも燃料補給などのサービスが整っている空港ということで、Gaithersburg Montgomery Co Airpark(GAI)を目的地として選んだ。


住宅地の中に光るランウェイライト

無事着陸

ターミナルビルの玄関

パイロットラウンジ

フライトプランニングルーム

ターミナルに入ったところ

 エプロンの路面は凍ってツルツルになっていた。凍って硬くなったロープを使って何とかタイダウンを終え、荷物をもって ロビーで一休み。携帯でホテルに電話すると出迎えのサービスは無いとのこと。タクシーを呼んだがなかなか来ず、ついに玄関を 閉められ外で待つことになってしまった。催促の電話をすると漸くタクシーがやってきた。そして深夜を過ぎてやっとホテルに 辿り着いた。

Flight Data
Wypnt Local UTC Duration
(Min)
Distance
(NM)
GS
(Kts)
HOBBS
TEB 19:44E 00:44       5511.7
COL 20:25E 01:25 41 35 51  
RBV 20:35E 01:35 10 17 102  
VCN 20:58E 01:58 23 45 117  
PPM 21:28E 02:28 30 55 110  
EMI 21:47E 02:47 19 37 117  
GAI 22:15E 03:15 28 22 47 5514.0
Total   2:31 151 211 84 2.3
Chart


 

Day 5



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